非常階段のようなものがついていたんですか。
爺
線路を歩き始めて、200mほど行ったところに、鉄筋コンクリートの立派な階段があった。そのへんのマンションの外階段より、立派なもんじゃったよ。そこを降りていったんじゃ。
由香
線路の点検用に、立派な階段が付けられているんですね。
爺
高架から降りたら、JRが手配したバスが待っていたんで、仙台駅まで送ってもらったんじゃ。
由香
お疲れ様でした。でも、そのあと、目的地まではどうやって行ったんですか。
爺
目的地は300キロも先じゃ。盛岡駅でレンタカーを手配してあったんじゃが、在来線も動く気配がない。やむなく、仙台駅周辺のレンタカー屋さんを回ったよ。1軒目と2軒目は、車がないといわれた。3軒目でやっと、借りられたよ。
由香
それも、不幸中の幸いですね。東北新幹線は、東京から青森まで、すべて止ったわけですから、都会からはるか離れたところで止ってしまったら、バスで移動するだけでも、何時間かかるかわかりませんよ。まして、レンタカーを借りられるなんて不可能でしょう。
爺
仙台駅からわずか3キロの所ということは、大都市に一番近いところに止った新幹線ということになるじゃろう。バスでの移動も、すぐに仙台駅に着いてしまった。
由香
本当に、悪運が強いですよね。栃木県や福島県で止った人は、新幹線内で1泊するしかなかったでしょうに。
爺
しかし、その後がたいへんじゃった。道を知らないところを、300キロも走るんじゃよ。
由香
ナビがついているでしょう。
爺
このナビが、使いなれたトヨタの車と違って、すごく使いにくいんじゃ。操作のしかたが、よくわからない。どうやっても、高速道路を表示してくれないんじゃ。一般道しか表示しないんじゃ。
由香
300キロ先となると、東北道に乗るしかないでしょう。一般道では行けませんよ。
爺
やっとの思いで、東北道に乗ったら、今度は事故で通行止めになった区間があって、また降りて、一つ先の高速入口まで、一般道を走るということまでやったんじゃ。
由香
さんざんなドライブになりましたね。300キロといえば、東京から浜松を越えて、豊橋あたりまでになりますよ。その日のうちにたどり着いたんですか。
爺
その日のうちには着かなんだ。