由香
じいさん、七年祭が近づいて、市内全域に縄が張り巡らされ、各家の前に提灯が下げられましたね。
爺
いよいよ近づいたね。それにしても今日は寒いなあ。温度計が8度。これじゃあ真冬並じゃなあ。
由香
こんなに寒くても、津田沼小学校の生徒は、半袖に短パンで、1日中いるんですから、すごいですね。登校すると、全員、半袖短パンに着替えるんですからね。学校にいる間は、全員この格好ですからね。
ところで、今朝、ラジオでトコロジストという言葉を説明していましたよ。一定の場所だけを詳しく知っている人を、トコロジストと言うそうです。私も津田沼のトコロジストになってきましたよ。
爺
いわゆる新語というやつじゃな。
由香
ところで、爺さんがサワラという木の話をしたときに、ヒノキもあるといっていましたね。どこにあるんですか。
爺
津田沼小学校の坂上交差点の北側の民家にサワラがたくさん植えられているという、10月1日の話じゃったな。葉の裏の白い模様がXに見えるのがサワラで、Yに見えるのがヒノキという話じゃったなア。
ヒノキは、習志野郵便局の少し先のバス停のところにあるんじゃ。
由香
習志野郵便局前から、マロニエ橋方向へ信号を渡ると、すぐにバス停がありますね。
爺
そう。そのバス停からマロニエ橋の方へ向って5メートルほど先に1軒だけ民家がある。その民家の前に、1本の、樹高5メートルほどの木がある。足元の1メートルくらいの部分の葉が枯れていて、みすぼらしく見える木じゃ。
由香
たしかに、バス停の5メートルほど先の民家の歩道際に1本だけあって、手入れもされてなくて、不思議な木ですね。どうしてこんなところに1本だけあるのかしら。
爺
この木の葉裏を見ると、はっきりとYの字になっている。紛れもなくヒノキじゃ。下の方の枯れた部分を取り除いて、上の方を剪定してやれば、見事な木になると思うが、残念じゃ。津田沼の個人宅には、手入れのされたヒノキが、何ヶ所かあるが、手に触れるところにある、このみすぼらしいヒノキを、津田沼名木百選第30番としておこうか。
由香
いつまであるかわからない木ですね。そのうち切られてしまうんじゃあないでしょうか。でも、ヒノキの特徴を、手で触って、確かめられるところにあるのは、これ1本だけですから、名木に指定してもいいんじゃないですか。何しろトコロジストですからね。
磨けば玉になる木を、名木指定するのもいいんじゃあないでしょうか。
爺
ついでに言うと、このバス停先の民家の南側、つまり裏へ回ると、駐車場に面して、ピラカンサがある。木全体にオレンジ色の実をつけていて、今が最高の見頃じゃ。たぶん津田沼で一番見事なピラカンサじゃろう。
由香
どうしてこのピラカンサを名木にしなかったんですか。
爺
駐車場に面しているんじゃ。ほれ見てみい。ピラカンサのすぐ前にある車が、鳥のフンで汚れているじゃあないか。
由香
ピラカンサは、鳥のフンで近所迷惑になるから、民家のピラカンサは名木にしなかったんですよね。
爺
むかしむかし、わしが若い頃、あるところで、自分の車を、ある駐車場に置いていた。わしの車の後ろに1本の木があって、毎年春になると、毛虫がいっぱい木について、わしのクルマが、毛虫のフンだらけになったことがあった。あれほど腹立たしいものはないよ。洗車がたいへんじゃった。