由香
じいさん、この無残な姿の写真はなんですか。
爺
下の大六天の、最近までの姿じゃ。
由香
上の大六天が、津田沼幼稚園前のたぬき山にありますが、ここが海に近い方の下の大六天神社ですね。ぼろぼろじゃあないですか。崩壊寸前といっていい。
爺
去年の暮れに見に行ったときには、完全になくなっておった。この1年くらいの間に撤去されてしまったらしい。
由香
たしか、大六天は、船の下から現れて、舟を沈めてしまう魔物のことですよね。その魔物を鎮めるために、大六天神社があるわけですよね。
爺
このあたりで舟が栄えていた時代は、せいぜい大正時代までじゃ。今のJRや京成が走る昭和になると、輸送道具としては使われなくなってしまった。戦後は埋め立てで、海もなくなってしまった。
由香
魔物を鎮める必要がなくなると誰も訪れなくなるし、建物を維持しようとする人もいなくなるというわけですね。
爺
船を使うことが無くなってしまったんだから、やむをえない。
由香
菊田神社に移して保存してもらえばよかったのに。
爺
安産の神や稲荷神社などは今でも信仰されているが、大六天神社は海で働く人の神様じゃ。その海で働く人がいなくなってしまったら、移す価値もなくなってしまったということなのかなあ。
由香
習志野市は軍隊の歴史を消そう消そうとしているように、過去の文化を大事にしない都市ですよね。
爺
しかし、なんと言っても神様であることには間違いない。下の大六天神社の最後の姿は、この写真だけかも知れん。
由香
この姿を写真に収めようなんて思う人は爺さんしかいませんよ。
この建物を移築しようとしたらお金がかかりますよ。菊田神社には、石のお宮しか移管されていません。
爺
この神社に思い出のある方は、画面に向かって、お参りください。2礼2拍1礼でいいんじゃなかろうか。
由香
下の大六天の神様はこの写真の中におられるというわけですね。
爺
賽銭箱を用意しとけばよかったかな。